会員コラム

会長コラム(2020.05.11)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はまだまだ収束していません。
今回は治療薬について少しお話しておきたいと思います。

1.レムデシビル

アメリカですでに認可された薬で日本でもつい先日認可されました。
もともとエボラ出血熱の治療薬として開発されていましたが、本来の病気に対してより先にCOVID-19に対して認可されました。点滴での投与で重症例に対しての薬ですが100%効くわけではなく、重い肝、腎障害の副作用が出ることもあるため投与する症例は慎重に判断する必要があります。

2.アビガン

日本の製薬会社が開発した薬で、すでに新型インフルエンザウイルス感染症に対して製造承認されていますが、新型インフルエンザが流行したときのために政府が備蓄している状態で、現在COVID-19に対しては臨床試験として投与されており、5月中には適応承認される予定です。
錠剤ですので軽症例に経口投与して重症化を予防する使い方が多くなると思われますが、動物実験で催奇形性が見られたため妊婦には投与できませんし、妊娠希望のご夫婦にも注意が必要です。

3.アクテムラ

現在すでに関節リュウマチなどの治療薬として使用されていますが、COVID-19の経過中に肺炎などが急速に悪化してしまう症例に対しての臨床試験として投与されています。
この急速に悪化する機序としては、免疫の働きを高めるために分泌されるサイトカインというたんぱく質が過剰に分泌され、ウイルスが感染した細胞だけでなく正常細胞も攻撃してしまうサイトカインストームという現象が考えられています。比較的若い患者さんが急激に病状悪化するのも、元々高齢者よりも免疫能が高いがためにこの現象が起こりやすいことが原因ではないかとも言えますが、どのような患者さんにこの現象が起こりやすいのかはまだはっきりとわかっていません。
この薬にはこのような免疫の暴走を食い止めることによって病状の急速悪化を防ぐ効果が期待されています。

上記の薬以外にもすでに他の病気に対して使用されているものの中でいくつか候補に挙がっている薬もありますが、COVID-19に対してはまだ正式に認可されておらず、試験的に使用されている段階です。

多くの薬が有効性、安全性を検討したうえで早急に使用できるようになることを願っています。